西郷隆盛の弟って知っていますか?
朝礼ネタ5848 2024/05/29 ビジネス尊敬する人経営西郷隆盛って名前は皆さん聞いたことがあるでしょう。
でも西郷従道(つぐみち、じゅうどう)は知らない人の方が多いと思います。
この人、隆盛さんの実の弟で、明治政府ができて間がないまだテンヤワンヤの時に、
兄の隆盛さんが政府に逆らって反乱で死んだ後も政府に残り、初代の海軍大臣になりました。
でも従道は陸軍を歩んできた人だから海軍のことはほとんど全く分かりません。
そこで彼は海軍の現状を把握するために、優秀な山本権兵衛少佐を抜擢して海軍の概況調査報告書の提出を命じます。
その少佐は克明な調査書を書き上げ、従道さんに提出しました。
一週間後、その調査書が大臣から返却された時、少佐が従道に「お分かりになりましたか?」と尋ねました。
従道が「よく分かったよ」と答えると、少佐は表情が俄かに険しくなりました。
そして、長年海軍に奉職した自分が7ヶ月もかかった報告書を、
元陸軍で海軍では新任のあなたが1週間程度で理解できるわけがない、と少佐はと怒り始めました。
つまり丹精込めた自分の仕事を適当に軽く扱われたと少佐は言うのです。いくら優秀でも一介の少佐風情の中将に対する物言いとしては無礼です。
しかし従道は「もっともだ」と、再度報告書を預かりました。
そしてまた1週間後、「読まれましたか」と尋ねる少佐に従道は「いや、読まなかったよ」と答えます。
「それは読んでも分からないから、万事任すということでしょうか。それなら了解できますが」と突っ込む少佐に、
「その通りだ」と従道が大笑いしたそうです。
従道の度量の大きさが伺える逸話ですが、なんだか部下への丸投げ上司みたいですね。
でももう一つの逸話があります。
ロシアとの関係が危機に瀕し、いよいよ対露戦争のために艦隊の整備が急務になって来た頃、
しかし連合艦隊の旗艦三笠の購入が予算の窮迫により困難になっていました。
内務大臣になっていた従道のところに相談に訪れた海軍大臣に出世した山本権兵衛に、
本当に必要なら他の予算を流用して購入すれば良いと、憲法違反になりかねない方法を従道は提案します。
さすがに驚愕で固まった山本に従道は鷹揚に言いました。「後で議会に追及されたら、皆で腹を切ればいい」。
分からない事は分からないと正直に言い、信じられる優秀な部下を選び、一度任せたら全て任せ、自らの命を投げ出すほどに全面的なバックアップはする。
そうありたいと思いながら、なかなかなれない上司の理想がここにある様にように思います。憧れてしまいますよね。