千年ぐらいでは、人間はあまり変わっていなかったようです。
朝礼ネタ5209 2022/11/14 読書・書評趣味皆さん、二次創作という言葉をご存知でしょうか?一般的には大好きなアニメやマンガ、ゲームなどの世界をテーマに創作される作品を指しています。
例えばバットエンドだったものをハッピーエンドに書き換えたり、お気に入りのキャラクターを中心にストーリーを展開させたり、「抜け落ちているかもしれない」エピソードを自分で補完したりと様々で、虹の世界とも呼ばれる世界です。
幕張メッセのツワモノこそ古参だと思われているでしょうが、この世界、更なる古参が存在していたのです。しかも平安時代です。
日本の古典の最高峰のひとつ、源氏物語は多くのフォロワーによって現代に伝えられました。
江戸の初めまでは板木での印刷がなかった為、物語は全て手書きで書き写されたのです。あの膨大なストーリーを書き写すのです、大変な情熱と愛がなくてはできません。
子供の頃の宿題を思い出してください。何度も書いているうちに手が文体を覚えてしまうのです。そうすると次に芽生える感覚は「この物語、続きはどうなるのか?」です。あるいは「あのキャラあの後どうなったの?」
かの更級日記の作者は、源氏物語へのオマージュとして狭衣日記を描き、藤原定家は和歌を極めるには源氏物語が必須、と力説しました。
この二人は源氏物語を後世へと残した特に有名な人物ですが、同時に源氏物語の二次創作に関わった可能性が高いのです。さらに言うと、源氏物語54帖の中に、二次創作があると考える研究者もいます。
まず、玉鬘という姫君の一連のエピソードは独立性も強く、紫式部本人か、実の娘の大弐三位が書いたと言う説があります。また、光源氏没後の後日譚世界での宇治十帖も、大弐三位か菅原孝標の娘の筆によるものではないのかとよく議論になります。
なにせ著作権という概念のない時代。紫式部の日記にも、決定稿で無いものを藤原道長に勝手に持ち出されパニックになるエピソードがあるぐらいです。現代の小説の後書きなどでも読んだ事のあるケースです。
遠く雅やかな平安時代が、実は現代とさほど変わっていない。仕事に煮詰まった時などに、思い出していただければ幸いです。