(ほとんどの)人に知られていない名君
朝礼ネタ2624 2021/01/01 故事ことわざ自己啓発私の好きな歴史上の人物を挙げます。
姓は劉、名は秀。と言っても多くの方はご存知ないでしょう。後漢を興した光武帝、と行ったほうが通りがいいかも知れません。あとは、日本との関わりでは、奴国に金印を贈った人、と言ったら大体の時代が伝わるかと思います。
ざっくりとした功績をあげると、崩壊した漢王朝を再興した事です。いかにも簡単に聞こえますが、実はかなり無理筋の大事業です。
まず生まれがかなりの傍系で王侯貴族ので出とはいえないぐらいの一般人である事。そして、「王朝の復興」を掲げて成功した中国史上ただ一人の成功者である事。
これがとんでもないタスクなのは、機能不全を起こして倒れた王朝という事は、再生させるために抜本的なシステムの改革と再構築が必要であり、戦争に勝つ以上に困難な仕事だからです。
一から作ったほうがよほど楽なのです。それをあえて選んだわけですから苦労人と言うべきかも知れません。
文筆家としても評価が高く、隴を得て蜀を望む、などの名言でも名高いのですが、私が最も好きな理由は別にあります。
ただの一人も、苦楽を共にした部下を粛清していない、という事です。
古代から数千年にわたり多くの国が興亡を繰り返した中で、自力での中国統一に成功した皇帝は約十人。それ以外の君主は数百人はいますが、部下を粛清しなかった人物は滅多にいません。
こんなエピソードがあります。
光武帝の娘が、光武帝の苦楽を共にした将軍の息子に嫁ぎました。ある時この二人が夫婦喧嘩しました。咄嗟に夫が「うちの親父がいなかったら、お前の親父は皇帝になっていなかった」と言いました。ええ、立派に不敬です。娘は慌てて父親の光武帝のもとに駆け込みました。聞かされた父、光武帝は「全くその通りだ、それがどうしたのだ?」唖然としていると、舅殿は息子の首根っこを掴まえて駆け込んできます。平謝りする二人にニコニコする光武帝。夫婦喧嘩はほどほどにするようになったとか。
こう言ったエピソードが実に多いのです。能力だけでない、人を惹きつけるリーダーシップの一例として、光武帝の人徳を挙げてみました。