「千両みかん」という話に思うこと
朝礼ネタ536 2021/01/01 7月趣味7月に入り、暑い季節になりました。
この時期になると「千両みかん」という落語を聞きたくなります。
私の好きな5代目古今亭志ん生師匠が演じていたものです。今はネットでも聞くことができる時代になりました。
話の筋はこうです。
夏の暑い盛り、ある呉服屋の若だんなが急病で、「明日をも知れぬ命」になりました。
医者の診断では、「これは心の病、願いが叶いさえすれば、きっと全快する」
そこで父親は息子の悩みを聞き出そうとするが、なかなか聞き出せません。
好きな女の子でもできたとか親には言いづらいことがあるのかもしれない、と息子が子供の時から仲良くしている番頭を使って聞き出させると、
なんと悩みは「みかんが食べたい」
現代のような、冷蔵庫がある時代ではなく、夏の盛りにみかんがあるわけがありません。
しかし、息子可愛さで主人は番頭に無理難題を押し付けます。
「もしみかんがないと言えば、息子は気落ちして死んでしまう。そうなったら、お奉行様に訴えて、お前は『主殺し』で磔だ。それが嫌なら…」
いや、今のブラック企業がかわいらしく思えます。
主人に脅され、番頭は大慌てで外に飛び出していった。
あちこち探してみたものの、やはりみかんは見つからず、暑さで目が回り磔柱が目の前にチラチラ…。
と、ようやく神田の青物商で、奇跡的に1個だけみかんが見つかります。値段はなんと1個1000両。
今のお金に換算すると約1億円です。正気の沙汰ではありませんが、息子可愛さに主人はぽんと1000両出してそのみかんを買います。
みかんを食べて、息を吹き返す息子。そして3ふさ残して、「これを両親とお祖母さんに」と番頭に手渡しました。
渡された番頭は思います。「一ふさ百両。三つ合わせて三百両…。このままずっと働いたって、そんなお金は手に入らない。
それならいっそ、このみかんを元手に…」とこの番頭、三ふさのみかんをを持ってそのまま失踪してしまうという何ともばかばかしいお話です。
私が筋だけ話してもあまり面白くはないでしょうが、志ん生師匠のあの破天荒な語り口で聞くと、笑いが止まらないですよ。
特殊な事情でたまたま莫大な値が付いてしまったみかんを、どこでも通じる資産と錯覚し、自分の未来を捨てて失踪してしまう番頭。
これがみかんだから笑えますが、たとえば、仮想通貨のような投資の資産だったらどうでしょう?
昔オランダではチューリップの球根に馬車1台の値がつくようなバブルがあり、崩壊と同時に数多くの人が破産しました。
冷静に考えればおかしい話でも、渦中にいると判断ができなくなる、そんな戒めとして考えてもらえればいいかなと思います。
それでは、今日も1日頑張りましょう。