赤冨士ならぬ赤っ恥

僕は鹿児島出身です。 上京して間もない頃はひどく訛っていましたが、三年経った今、もうすっかり標準語が板につき、押しも押されもせぬシティボーイです。

余談ながら、れっきとした、とか、立派な、という意味で「押しも押されぬ」と言い方をする人が多いと思います。 でも実はそれは間違っていて、正しくは「押しも押されもせぬ」と言うのだそうです。 皆さん、この機会に覚えて下さいね。

このように、僕はうんちくを傾けるのが大好きな男です。

ところで先日、僕は鹿児島から遊びに来た小学生の従弟たちを連れて、初めて芦ノ湖に行き、海賊船と呼ばれる人気の遊覧船に乗って来ました。 晴天のとても暑い日でしたが、湖上には心地よい涼やかな風が吹きわたっていました。

「芦ノ湖はカルデラ湖なんだよ。お前たち、カルデラの事は、もちろん知ってるよな?」 などと偉そうに言いながら、景色を楽しんでいた時、ひときわ高い山が目に入りました。 なだらかな稜線が長く伸びた黒茶色の山は、形が富士山にとてもよく似ていました。

鹿児島にも、富士山そっくりの山があります。 筑紫冨士と呼ばれる桜島、薩摩富士と呼ばれる開聞岳です。 僕は、神奈川にも、そういう山があるのだと思いました。

それで、たまたま近くにいた年配の男性に、何冨士というのか尋ねると、 一瞬けげんそうな表情を浮かべながら夏冨士だと答えたので、重ねて正式名称は何かと尋ねました。

すると彼は優しい声で、「あれが、オリジナルの富士山ですよ」と教えてくれました。

霊峰と呼ばれる富士山も、さすがに真夏には雪がとけて、あんな姿になる事があるのですね。 ちっとも知りませんでした。

従弟たちは、ここぞとばかりに笑い転げていました。 僕がその日、口止め料として、奴らに相当タカられた事は、言うまでもありません。

自分の無知さを思い知らされた、出来事でした。 それ以来、僕はちょっとだけ、謙虚になった気がしています。

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